NC工作機械は事前に作成された工具回転指令や軌道指令をシーケンシャルに実行するという特性上,加工中にびびり振動や工具欠損などの異常状態を判断することができません.異常検知をするためには通常,加速度センサや力センサなどを加工空間に設置する必要がありますが,本研究では,付加的なセンサを一切用いることない異常状態検知システムの開発に取り組んでいます.具体的には,外乱オブザーバ理論を適用して,主軸や送りのサーボ情報のみで異常検知を行うシステムを開発しています.現在までに,びびり振動,工具欠損,工具摩耗,工具衝突の4問題の高精度なリアルタイム検知手法を提案しています.  
NEDO産業技術研究助成(若手研究グラント)を受け,センサレス力制御技術を適用して,軌道に加えて力も制御できる新しいコンセプトの "力を感じる超精密加工機"を開発しました.ナノ精度の位置決めに加えて,付加的な力センサを搭載することなく各軸0.01Nの力を制御することができます.現在は,この加工機を用いた応用技術として,微細工具の接触検知技術および機上計測技術の開発に取り組んでいます.これまでの成果として,極小径エンドミルの接触検知ではナノオーダの接触を検知することや,1μmの精度で機上計測が可能であることを確認しています.  
 
送り軸の位置と力,主軸の回転速度とトルクをそれぞれ制御できる"力を感じる超精密旋盤"を試作しました.この旋盤を用いて,センサレス力制御を利用したびびり振動抑制技術に関する研究を行っています.旋削のびびり振動を抑制する手法として,速度変動を利用して振動の発達を抑える方法や,伝達関数などを使って安定限界線図を予め求めて安定な加工条件を適用する方法といったフィードフォワード的な方法が一般的です.それに対して,本研究では,振動状態に応じてアクティブに力を制御してびびり振動を抑制する手法の開発に取り組んでいます.  
 
機械加工プロセスの状態を判断する上で,切削力は最も有益な情報と言われています.生産現場で利用できるサステイナブルで実用性のある切削力計測を考えた場合,外付けの力センサを用いることは難しい.そのため,内部センサを利用した,安価でリアルタイム性があり,かつ高精度な切削力推定技術の開発が望まれています.本研究では,これまでのリニアモータ駆動ステージにおける加工力推定技術に関する研究成果を活かして,ボールねじ駆動ステージにおける高精度な切削力推定手法の開発を行っています.  
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製品や部品の品質を高めるための仕上げ加工としてバフ研磨加工があります.複雑な部品や補修などに適用される場合,状況に応じた適切な研磨圧を与える必要があるため経験豊かな技術者の手作業によって行われているのが現状です.一方で,生産効率の向上や製品の均一化,研磨剤の人体への影響などの観点から自動化に対する要望が高まっています.そこで,自動化を実現する上で必要となるバフ工具状態の実時間モニタリングに関する研究を行っています.粘弾性変化を監視して,バフ工具の最適な交換時期を提示するシステムの開発を目指しています. 
大型かつ高精度が求められる部品の補修研磨は技術者の手作業により行われています.一方で,大型部品の補修研磨の自動化を考えた場合,ポータブルな加工機を用いる必要があります.そこで,本研究では,熟練者の手作業を再現できるシリアル-パラレルメカニズムのポータブル5軸研磨加工機を開発しました.センサレス力制御とモードディカップリング手法を応用することで,工具軌道,工具姿勢に加えて研磨圧をそれぞれ独立に制御することができ,熟練者の研磨加工を再現できます.これにより,高品位な研磨表面を実現することに成功しました.  

加工が難しい複合材料やセラミックスに超音波振動を付与することで高効率・高精度な微細加工を行う研究をしています.
工具を超音波振動させる工具振動切削では,瞬間的に大きなエネルギーを与えて切削を行うことで平均的な切削抵抗を軽減して切削することができます.この効果により,超音波ドリル加工では,従来よりもきれいな穴をあけることができることがわかりました.また,切削油に超音波を付与するキャビテーション援用加工に関する研究も行っています.キャビテーションにより切りくず排出性が向上し,工具寿命を延長することに成功しました.

 
 
電子技術による信号処理回路を光で代替する技術が注目を集めています.光で信号処理を行うためには,光速で移動する光を一定時間,一定の場所に閉じ込める微小光共振器が必要です.高性能な微小光共振器を実現できる材料として期待される単結晶蛍石には結晶異方性があり,化学的なプロセスの適用が難しく,超精密加工などの機械加工が必要不可欠とされています.そこで本研究では,微小光共振器開発を目的として切削方向に対する結晶面,結晶方位が連続的に変化する外周旋削における単結晶蛍石の加工特性を結晶異方性の観点から解析しています.  
電機粘着ゴム(EAR)はこれに電界を印加することで粘着力が生じる機能性ゴムです.本研究では,実験および数値解析を駆使してEARにおける電気粘着効果の現象解明に取り組んでいます.また,応用研究として柔軟物の固定搬送技術の開発研究を行っています.  
開発した電気粘着ゲルは,これに電界を印加すると表面の粘着が変化する機能を持ち,クラッチ機構,減衰機構,制動機構,保持機構などへの応用が期待されています. 一方で,電気粘着ゲルは粒子が分散した構造をとることから,その分散具合により個体差が生じてしまいます.そこで本研究では性能安定性を高めることを目的に,3次元微細構造を有する電気粘着表面の開発を行っています.フォトリソグラフィにより,粒子の代りとなる3次元微細構造を形成することで,表面状態の均一化を図り,安定した電気粘着効果の発現を目指しています.  
特殊な微粒子とゲルから構成される電気粘着ゲル(EAG)は,これに電界を印加すると粒子が凝集し,それに伴いゲルの隆起が生じることで対象物と粘着します.このメカニズムを応用して,電界に応じて熱伝導特性が変化する可変熱伝導EAGを開発しました.現在は,基礎特性の解析を行いながら,幅広い熱伝導特性の変化が生じるEAGを開発することを目指しています.  
近年、地震による建物振動を抑制する制振ダンパの需要が高まっており,中でも様々な種類の地震に対応可能な、セミアクティブダンパーに対する期待は高まっています.そこで本研究では,電場で粘着性が変化するEAG(電気粘着ゲル)を制振機構に応用することを試みています.高性能かつ簡素な機構のEAGダンパを開発し,制動力を制御することで高い振動抑制効果の実現を目指しています.  
静圧空気案内とは、案内面とスライダの間の微小すきまに圧縮空気による潤滑空気膜を形成して、構成要素のしゅう動摩擦をほぼゼロにできる機械要素です。 案内面材料としては、通常アルミナセラミックスが使用されますが、まれに存在する微小穴が原因して、スライダに上下方向の動的微小変位が発生してしまうという問題があります。そこで、本研究では、このメカニズムを解明し、微小振動を回避可能な静圧空気案内の新たな構造を提案しようとしています。微小すきまにおける空気流の状態をコンピュータシミュレーションにより解析し、その結果にもとづいて静圧空気案内の設計をおこなおうとしています。
分析機器などに用いられるレンズを始めとする光学素子を精密に加工する技術が近年、注目されています。一般的にガラスなどの脆性材料は金属材料と違い硬くて脆い性質のために表面を精密に加工することは困難とされていますが、切削加工においては0.1μm程度の極微小な切込みで加工を行うことで脆性破壊を起こさずに面性状の極めて良い加工(延性加工)を実現することができます。本研究では効率よく、より精密に加工できる条件を探索しつつ、延性加工、脆性破壊のメカニズムを解明することを目的としています。
工作機械の高速化・高精度化を図るためにリニアモータを用いてテーブルを駆動する研究を行っています。複数のリニアモータを利用して駆動する際、各モータの推力が同一にならないためにテーブルの姿勢が変化するといった問題が発生します。
これを解決するために本研究では各モータの位置をセンサで測定し、その結果から各リニアモータを独立に制御して、重心位置制御と同時に振動・姿勢制御を行うことを目的としています。
 

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